ディズニー短編映画『音楽の国(Music Land)』

1935年のディズニー短編映画『音楽の国(Music Land)』、
すっごく面白くて何度も繰り返し観てしまいました♪

9分半ほどの長さしか無いのですが、
アイデアぎっしりの上、芸が細かく作られているなーと感じました。
ですので、視覚も聴覚も集中して細部を見落とさないようにしました。

下記は、私が観た感想と、私なりの解釈を交えた解説です。
内容を細かく書いてありますので、これから映画を観る方はご注意ください★

映画は、ベートーヴェンの『英雄』のメロディで始まります。
物語の舞台は、不協和音海(Sea of Discord)で隔てられている2つの王国。
1つはト音記号の形をしたシンフォニー国(Land of Symphony)、
もうひとつはサックスの形をしたジャズ島(Isle of Jazz)です。

音楽の国(Music Land)

登場人物たちは皆、何らかの楽器です。
セリフは皆無で、それぞれの楽器の音色や音階で感情や意志を表現しています。

まず、シンフォニー国の情景から。
チェロ女王とその娘であるヴァイオリン王女の前で舞踏会が催されていて、
ハープとヴァイオリン(ヴィオラ?)のペア数組が、
ベートーヴェン『ト調のメヌエット』でしっとりと優雅に踊っています。
しかし、女王はロクにダンスも観ずにウトウト。
王女はシメシメとばかりにそっと宮殿の外階段踊り場へ出て、
軽快でアップテンポなダンスミュージックが流れてくるジャズ島を眺めます。

ジャズ島の宮殿ではタンバリンやティンパニーや
ミュージックソーやウクレレたち等が
テナーサックス王の前で陽気に踊りまわり、王様自身もドラムをたたいてノリノリ。

その横で、興味が無さそうにそっぽを向いていたアルトサックス王子が
何かに気付きます。忍び足で、バードホイッスルたちが
ピヨピヨ飛び回る外階段踊り場へ出てクラリネット型望遠鏡を覗いてみると、
ヴァイオリン王女がこちらに向かって
白ハンカチを振りながら微笑んでいる姿が見えるではありませんかー。

喜んだアルトサックス王子はソッコーで外階段踊り場から木琴イカダに飛び降り、
ポロロロポロロロと音符型オールを漕いで不協和音海を渡り、
シンフォニー国を目指します。

その様子を見たヴァイオリン王女は、
ゴセックの『ガヴォット』をBGMに階段を駆け下り、
音符型果実を実らせているチェロ型の幹の樹木がある庭園で、王子を待ちます。

シンフォニー国へあっさりと不法入国した王子はズッコケながら王女とご対面。

音楽の国(Music Land)

そんな王子を前にヴァイオリンの音色でキャピキャピ笑いつつ、流し目を送る王女。
王子はそんな王女の手に情熱的な挨拶のキスをするのですが、
王女は笑顔を見せつつもダメよぉダメダメと走り去り、
チェロ型樹木の陰に隠れつつ王子を見つめます。
そこに駆け寄った王子と共に、王女はチェロ型樹木の周りで
鬼ごっこ遊びを始めるのでした。

ちょうどそのとき、外階段踊り場へ出てきたチェロ女王が2人を発見。
階段を降りて庭園へ向かうのですが、宮殿敷地内へ逃げ込んだ王女を門の陰で
待ち伏せていた王子に、間違ってブチューっとキスされてしまいます。

王子は笑顔でごまかしながら逃げようとしたものの、
集まってきた近衛兵たちによってメトロノーム型の塔に投獄されてしまいます。

カッコンカッコンとメトロノーム塔がテンポを刻む中、考え込む王子。
小窓から外を眺めた途端ハタと何かを思いつき、早速、手紙を書きます。
(五線譜に音符を書き込んだ手紙=楽譜。彼らにとって音楽は言語なんですね)

その手紙を小窓越しに王子から託されたバードホイッスルはジャズ島へ飛び、
ウクレレダンサーと遊んでいたテナーサックス王へ手紙を渡します。

手紙を読んだ王は即、シンフォニー国への攻撃を決意。
要塞と化したジャズ島宮殿にはチューバを主砲とする
金管楽器砲隊(一部ファゴット)が配備され、
王自らの指揮のもと、シンフォニー国に対して奇襲爆音攻撃が開始されます。

音楽の国(Music Land)

シンフォニー国に降り注ぐ音符弾。
攻撃を受け、壮麗なパイプオルガン様式のシンフォニー国宮殿も要塞と化し、
尖頭パイプ群は大砲として横倒しになります。女王の指揮のもと、
ワーグナーの『ワルキューレの騎行』を奏でる爆音で迫力満点の応戦!

音楽の国(Music Land)

ワルキューレのメロディとジャズのリズムで音楽が入り乱れています。

ヴァイオリン王女が、チェロケース型ボートを漕ぎながらジャズ島に向かって
懸命に白旗を振りますが、戦闘は全く終わらず、王女自身も攻撃を受けます。

王子が小窓からそれを見ていたちょうどその時、メトロノーム塔が被弾。
自由になった王子は木琴イカダで王女を救出に向かいます。

その様子に気付いたチェロ女王とテナーサックス王は攻撃を中断。
チェロ女王は近衛兵たちと共に
メトロノーム付きチェロケース型カヌーで王女救出に向かい、一方、
テナーサックス王は、金管楽器型エンジン(ユーフォニアウム?)と
タンバリン型スクリューを搭載した小型ボートで王子救出に向かいます。

王子も王女も助け出され、海上の救出現場でお互いを睨み合う王と女王。
と思ったら王が突然ニッコリ。女王に対して和解の握手を求めます。
女王もすぐそれに応じ、戦いは終わりを迎えました。

場面は変わりまして結婚式。
コントラバス牧師(司祭?)の前で結婚の誓いを立てる2組のカップル。
1組は王子と王女、もう1組は王と女王!

不協和音海には両国を結ぶハーモニー橋(Bridge of Harmony)がかけられ、
陽気なジャズにアレンジされたワーグナーの『結婚行進曲』が流れる中、
ハッピーエンドを迎えるのでした♪
パチパチパチ☆

音楽の国(Music Land)

テナーサックス王は「ジャズ王」と呼ばれたポール・ホワイトマンが
モデルとなっているとのこと。(顔ソックリですね、こちら

私はこの「音楽の国」をきっかけにポール・ホワイトマンのことを知ったのですが、
ホワイトマンは自身の楽団で『ラプソディ・イン・ブルー』を初演するなど、
クラシックとジャズの要素を持つ
「シンフォニック・ジャズ」の人だったそうですから、
まさにこの映画のテナーサックス王同様に、
クラシックとジャズの間に橋を架けた人だったんですね。

あと、観ながら思ったことなんですけど、
シンフォニー国とジャズ島は面積は同じくらいですけど、
国と島という違いがありますね。
その違いは、音楽的な権威の違いを表現しているのかなー。